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学術図書出版
自然観の民俗学

自然観の民俗学

生活世界の分類と命名

¥11,000 税込
商品コード: 9784874490952
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本書はフィールドワークから惹起される小さな疑問から出発している。「自然」とは何か。それは民俗学において生業研究をおこなってきた筆者にとっては、たえず頭のどこかに引っかかってきた問題である。そして、それは同時に「文化」とは何なのかという問題とも重なる。

いちおう筆者は以下のように考えている。文化とは、人が個人的また社会的な生活を送る上で必要な知恵・技術や情感・行動のうち、遺伝的に獲得されたもの以外のすべてを指す。文化は自然の対義語とされることが多いが、その文化から自然を規定することはできないか。

逆説的な言い方をするなら、人が文化とするもの以外はすべて自然ということになる。自然は形あるものもあれば、観念として想起されるものもある。そうなると、そもそも文化とは自然と対立するものなのか、という疑問に突き当たってしまう。むしろ民俗学がフィールドとする生活世界においては自然と文化は対立するものというよりは、さまざまに関係し合うものであり、相互浸透的な存在であるといった方がよい。

地域に暮らす人びとへの聞き取り調査により捕捉可能な自然は、いつも文化との連続性の中にある。少なくとも、暮らしや生業と切り離され、対置されるような関係として語られることはない。民俗学の手法で知り得る生活世界においては、「自然」はまさに「文化」そのものである。本書は、そうした発想のもとにまとめたものである。自然との係わり方から視たとき鮮明となる文化の体系性のひとつに「分類」と「命名」があり、そこに注目するのが本書の特徴である。

分類と命名は生活世界においてはまさに「生きるための技術」として機能する。ひと言でいえば、本書は、生きるために人はいかに自然を利用してきたか、その技法と特性を、自然認識のあり方から探るものである。具体的には、民俗学の手法を用いることで生活者の視点に立ち、自然利用に伴う分類と命名の行為に注目する。自然観とは、いわば自然との付き合い方の技法、または人による自然の解釈の仕方でありその描き方であるということができよう。

そのとき、もっとも基本的な自然との付き合い方となるのが、自然を分類し命名するという行為に現れる。これは従来、民俗学では民俗知識・民族技術の分野に属する研究であり、民俗分類学や民俗自然誌とも深く関わる。

そのとき、「自然観」を抽象的な議論を通してではなく、生活世界で繰り広げられる生活の営みの具体に求めるのが本書の狙いである。生活世界において人が自然のどの部分とどのようにかかわってきたかを五感のレベルにおいて具体的に描くことで、その人、その地域、またその時代において「自然」とは何なのかを影絵のように浮かび上がらせることができる。言葉の定義を厳密化し抽象的に議論することの必要性は認めつつも、それはともすると民俗学が重視する生活の現場から遊離した議論になりがちである。

そこで、生活世界にある自然の事物や現象を取り上げ、それがいかに人に対峙するのかを時代性・地域性の中に見てゆくことにした。自然と人のかかわりについて民俗学の蓄積を用い整理分析。
目次: まえがき─自然観への接近法─ IX
 一 自然と自然観―生活世界からの発想― IX
 二 生活世界の分類と命名―三つの視角― XIV

Ⅰ 生物の民俗分類
一章 出世魚の民俗分類学 ―ブリの分類と命名― 3
一 はじめに 3
二 魚名の研究史 4
三 ブリからみた日本の中の山口 7
四 成長段階名からみた地域区分―地域差の視点― 11
五 市場原理がもたらす成長段階名の変化―時代差の視点― 22
六 技術革新と成長段階名―ハマチ養殖がもたらしたもの― 28
七 生活世界における成長段階名の意味―「尾頭つき」から「切り身」へ 36
八 魚名は社会の鏡 42
二章 民俗分類と商業論理の相関 ―アワビの分類と命名― 47
一 はじめに 47
二 海付きの村の生業 50
三 百姓漁師の漁撈活動─男の漁と女の漁─ 59
四 百姓漁師における貝の認識―アワビの位相― 68
五 「地方名」の意義 79
六 民俗分類と「市場名」―魚名の展開①― 85
七 民俗分類と「商品名」―魚名の展開②― 94
三章 家畜の呼称と生業戦略 ―ヒツジの分類と命名∧麗江納西族の事例∨― 111
一 はじめに 111
二 納西族の村とヒツジ 112
三 ヒツジ飼養のあり方 115
四 ヒツジの命名と管理―選択的命名の意味― 121
五 農耕民の家畜管理と命名―牧畜民との対比から― 129
四章 養蜂技術としての民俗分類 ―ハチの分類と命名∧麗江納西族の事例∨― 135
一 はじめに 135
二 在来養蜂をおこなう村と家 136
三 麗江納西族の在来養蜂 143
四 ハチの民俗分類―群の社会性をめぐって― 153
五 野生と人為の相克―ハチ群の去来をめぐって― 155
六 民俗技術としての在来養蜂 159

Ⅱ 空間の民俗分類
一章 海村の民俗空間構造 ―生活世界の分類と命名― 171
一 はじめに 171
二 海付きの村の民俗空間―ウミとオカ― 173
三 民俗空間としてのオカ―ヤト・ヤマ・タカヤマ― 180
四 民俗空間としてのウミ―キワ・オキ・ダイナン― 188
五 民俗空間としてのムラ―チョウ・クミアイ・キンジョ― 195
六 境のイメージ―信仰と生業― 204
七 海村にみる民俗空間構造の特徴とその変遷 212
二章 百姓漁師の漁場認識 ―海底微地形の分類と命名― 221
一 はじめに 221
二 海付きの村のくらしと民俗空間 224
三 海の民俗空間 228
四 ネの認識 241
五 ネの名称 253
六 命名からたどる歴史世界 262
七 命名にみる漁場認識のありかた 267
三章 ヤマアテの効用と限界 ―景観の分類と命名― 275
一 はじめに 275
二 百姓漁師にとってのヤマ―ヤマとは何か― 276
三 二つのヤマ 277
四 三つのヤマアテ 278
五 ヤマの設定 281
六 ヤマの解読 284
七 ヤマアテと生活感覚 287
四章 池の名前と村の記憶 ―人工地形の分類と命名― 289
一 はじめに 289
二 耕地と水 290
三 溜池と名称―複数の名称を持つ溜池― 294
四 溜池名称の通時的変化―「明昭池」の事例― 299
五 名称変化の意味―記録装置としての溜池名称― 304
五章 盆地の民俗世界観 ―生活空間の分類と命名― 315
一 はじめに 315
二 長野盆地の民俗空間―テーラ・ヤマ・マチ― 319
三 ヤマからみた民俗空間 329
四 テーラからみた民俗空間 337
五 マチからみた民俗空間 343
六 盆地の民俗世界観―テーラ・ヤマ・マチの関係性から― 353

Ⅲ 気象の民俗分類
一章 風名の民俗 ―風の分類と命名― 367
一 はじめに 367
二 風にみる日本の中の山口 368
三 風からみた山口―分布パターンと地域性― 375
四 山口に吹く風―沿岸・内陸・島― 380
五 風とイメージ 392
二章 観天望気の民俗 ―天気の分類と命名― 399
一 はじめに 399
二 雨と雪の予兆 400
三 観天望気とことわざ―里と海― 406
四 自然への対応―信仰と技術― 412
五 観天望気への思い 416
三章 農の雨、漁の風 ―風雨の分類と命名― 419
一 はじめに 419
二 天気を読む―雨と風― 420
三 漁とケシキ 432
四 農と自然―水田と焼畑― 435
五 自然の営みをめぐる農と漁 445
四章 雪を知り、雪で知る ―雪の分類と命名― 451
一 はじめに 451
二 雪を知る─雪の訪れと積雪量― 452
三 雪で知る―雪形と農のはじまり― 460
四 雪を知り、雪で知る 468
五章 風を知り、風で知る ―風の分類と命名― 471
一 はじめに 471
二 名付けられる風 472
三 百姓漁師の天気予測 476
四 良い風、悪い風―一日ごとの風予測― 477
五 風の知らせ 481
六 オキテ(沖風)―一年の風予測― 482
七 風と生活の組み立て 484

 あとがき 487
初出一覧 491
図版(図・表・写真)一覧 496
索引(地名・人名・事項)  512


著者略歴(紹介) -1: 一九五九年、東京都生まれ筑波大学大学院環境科学研究科修了。博士(文学)熊本大学文学部・助教授、国立歴史民俗博物館研究部・教授、総合研究大学院大学・教授などを経て、現在は神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科・教授および日本常民文化研究所所員専門は、民俗学(生業論・環境論)、物質文化論〔主要著書〕『水田をめぐる民俗学的研究』(一九九八年)、『餅と日本人』(一九九九年)、『水田漁撈の研究』(二〇〇五年)、『日本民俗生業論』(二〇一二年)、『田んぼの不思議』(二〇一四年)、『環境史研究の課題』(編著、二〇〇四年)、『日本の民俗 全一三巻』(企画編集、二〇〇八―二〇〇九年)

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ISBN 9784874490952
著者 安室知
サブタイトル 生活世界の分類と命名
出版社 慶友社
本のサイズ A5
ページ数 528
発売日 2016-02-05